僕はここ10年ほど古い小屋や納屋などをモチーフに描いています。時々なぜ小屋ばかり描いてるんですかと聞かれますが、簡単に言うと好きだからです。実は建物を描くのは最近のことではなく子供の頃から古い建物や町並みや木造校舎ばかり描いていました。田舎なので周りに自然はいっぱいあるのですがどうしても建物に興味がいってしまいます。田舎には新しいビルなど当然無く、あるのは古い建物ばかりだったのです。高校生の時は実家から通っていた高校が遠かったので江戸時代のような建物が並ぶ古い町に下宿していました。そして高校もまた文化財になるような古い建物でした。ピカピカでツルツルの町並みが好きではないのでどうしても古い建物に興味を持ってしまいます。大学に入って現代美術や立体にも興味を持ってしばらく建物を描くことから離れました。その後紆余曲折しながら40歳を過ぎた頃に写真を撮るために家の近くをぶらぶら歩いていると、畑の中でポツンと佇んで西日を受けて光っている古い小屋を見つけてたまらなく美しいと思いました。やっぱり人は美しいと思うものを描くのが一番良いのではないかと小屋をモチーフに描き始めました。描くためには美しい小屋を探さなくてはなりません。小屋は地図やグーグルマップには出てきません。あちこち出かけて探すうちに偶然出会うしかないのです。最近は友人が情報を寄せてくれたりするので助かりますが、古い小屋はどんどん取り壊されていき、もう家の近くでは新たに見つけることが難しくなってきたので地方に出張して探しています。気に入った小屋はとりあえず写真に撮って家に帰ってデッサンをしたり水彩で描いたりしてから油絵にします。小屋の形や色や向き、背景、天候、時間や季節や光の方向などを色々と試し何度も描き直しながら描きます。描いているとまた新しい発見があります。画面の切り取り方や構図やマチエールも少しづつ変わってきています。同時に自分の絵への考え方もまた変わってきました。これからもまた少しづつ変化しながら自分が見たい風景を描いていこうと思っています。
写真は昨年から今年にかけて描いた小屋の油絵です。5月の甲府での個展に出品しました。