アトリエ蒼通信238 2012年1月12日(木) |
その時は夕方近くで結構混み合っていました。僕はつり革につかまって立っていると、前に座っていた60歳台の紳士が鞄の中から小さめのスケッチブックを取り出して何やら描き始めました。
それは最近描いた風景スケッチのようで、まだ描き足りない細部を描きたしたり、鉛筆のうえからペン入れをしたりしてご自分のスケッチの何枚かに手をいれていました。僕はのぞかなくても下を見るとしっかり見えるので何となくその方のスケッチのほとんどを見ることになりました。そして、この混んだ電車の中で、多くの人に見られることを覚悟でスケッチしている紳士に感心していると電車が渋谷駅に着いて客が降りて少し空いてきました。
紳士はスケッチブックの新しいページを開き、向かいに座って読書している女性をスケッチしはじめました。そのスケッチの途中、立っている男性が動いて女性がその男性で見えなくなると、今度は斜め向いの女性をスケッチしはじめました。また電車は駅に着き、混んできてスケッチを断念。僕も目的の駅に着いて降りました。電車で移動中の少しの時間も無駄にせずデッサンをするなんてまるで受験生のように熱心な方でしたが、あまり落ち着いて描いているようにも思えなかったのが残念です。
今日の教室の生徒さんは、空いた電車のなかで向かいに座っていた親子があまりにもかわいかったので、お子さんの表情がとてもかわいいので写真を撮って良いですか?とお母さんに了解を得て携帯で撮影したものを、アトリエで2週間かけて水彩で描いていました。
勝手に電車の中や喫茶店で他人をスケッチするのは、描かれるほうとしてはあまり良い気がしないので、トラブルになる可能性もあります。こういう素直な方法もあるんですね。まあ、お願いする人の人柄もあるのでしょうけど。
今日の作品。

上に書いた電車のなかでの光景です。

籠と芽が出たたまねぎとランプ。

ランプとオキーフの画集、蓮の実。