アトリエ蒼通信椿峰3 2010年8月6日(木) |
実際物を見て描いているときでも横に技法書を置いて本を見ながら描いてしまうこともあります。
そんなときはまず良い絵が描けません。先生のように上手にも描けないし、自分らしくのびのびも描けなくなります。つまりその時点で自分の絵ではなくなってしまっているのです。物を見て自分が感じたことやひらめいたことが無くなり、技法書の手本どおりの絵を描いてしまいます。それは、その先生の考えや色の選び方や形の追いかけ方であって決して自分のものでは無くなってしまうのです。だからあまり良い絵にならないことが多いのではないでしょうか?
決して技法書が悪いとか、読むなとか買うなとは言いませんが参考程度にして気軽に読み、なるほど、こんな描き方があるのかぐらいに眺めてみるのが良いと思います。
僕は技法書を1冊買うなら、好きな人の画集を買って時々眺めているほうが本当の勉強になると思います。
数多くの技法書の中でとても関心して良い本だなと思ったものもあります。
それは出口雄大(著)「水彩学 よく学びよく描くために」という本です。
水彩に関する定義や歴史、技法、画材などを詳しくわかりやすく書かれていて、本のサイズも小さめで手順など写真も最小限で押し付けがましくないのが良いと思います。つまり、この本には水彩が上手になる近道を書いていません。かえって回り道をしながら学んで描いてほしいという著者の愛情があふれているように感じました。
昨日、毎朝見ている朝ドラの「ゲゲゲの女房」で水木しげるがアシスタントの倉田君(多分、モデルは池上遼一)が新人賞の締め切りにあせって描いた漫画に対して厳しく言う場面がありました。
「焦らずに本を読んだり、資料を調べたりしてじっくり仕事をしろ。若くして有名になってもその後ずっと漫画を書き続けることは本当に苦しいことだ。近道を選ぶな。近道を選ぶとその先は行き止まりだ!」というようなことを言うのですが。さすが水木しげるは良いこと言うなと関心したのです。実際の台詞ははっきり覚えていませんがこんな内容の話です。
絵でも同じことが言えそうです。
でも、若い人ならまだしも60を過ぎて絵を始めたのだから早くしないとうまくなる前に死んでしまうなんて言う方もいますが、うまくなることだけが 絵を描く目的では無いようにも思います。
プロの画家のちょっとしたコツをまねして上手な絵を描いたとしても、本物を見る目のある人には見抜かれてしまいます。
前置きが長くなりました。今日の作品です。
今日は夏の海をイメージさせる貝がモチーフです。



しかし、ユニークであれば良いと言うものでもなく、やっぱり持って生まれた物なのかな〜なんて、自分を振り返るとがっかりもします。§