上野の森美術館 neoteny japan |
「neoteny japan」というタイトルの展覧会を見に 上野の森美術館へ行きました。この展覧会は日本の現代美術のコレクターである精神科医の高橋龍太郎氏のコレクションを展示したもの。奈良美智や村上隆らの登場で1990年代以降の日本の現代美術が世界的注目を集めるようになりました。この展覧会では現代のアーティスト33名の作品を通して日本の現代美術の潮流や傾向が見て取れます。
岸田劉生展では50代以降のお客さんが多いのにくらべ、こちらはぐっと年代も若くなり20代30代の若い人がほとんど。作品もぐんとカラフルに巨大になり立体、映像、インスタレーションなど多様です。まるで、80年前の日本と今の日本社会の現実を比べて見るようです。80年前岸田劉生は当時の日本美術の最前線を生きるスターだったわけで、当時の現代美術作家の1人だったのです。80年経ってこうした作品をみると絵の内容はまったく違っていても、作家それぞれがかかえている問題はそう変わらないようにも思えます。今をどう自分らしく表現できるのかという問題にそれぞれの切り口で挑んでいるように見えます。面白かったのは岸田が西洋で主流の後期印象派以降の美術ではなく北方ルネッサンスや日本の肉筆浮世絵などに目を向けるようになって、自分の世界を見いだしたように、現代の日本のアーティストも日本画や浮世絵、漫画、アニメなどとリンクすることによって新しい表現に至っていることです。1980年代には日本の現代美術は西洋から20年は遅れていると言われていたように思います。日本のバブルの崩壊とともに、西洋美術から日本や自分や自身の持つファンタジーや日常を見つめ直すことに気づいていったアーチスト達の才能はとても魅力的です。
堅苦しいことを描きましたがいろいろな意味で楽しめる展覧会です。若い人だけではなく、50歳以上の方にも是非見ていただいて、現代進行形のアートを体感していただきたいです。
『ネオテニー・ジャパン 高橋コレクション』は7月15日(水)までです。
上野の森美術館
